おすすめコンテンツ

コンプライアンス研修の理想と現実

コールセンター業務では、お客様の個人情報を扱う機会が多くなりますが、実際に電話をかけるテレフォンオペレーターは正社員だけとは限りません。契約社員、派遣社員、アルバイト、パートの方も該当します。インバウンド系では通販の受付、アウトバウンド系では商品やサービスの営業にて、一日に何十人分もの個人情報を扱います。

顧客情報が漏えいしてからでは遅いです。セキュリティ事故を防ぐためにも、コンプライアンス研修をしっかりと行い、コールセンターの信頼向上に努めましょう。今回は、コンプライアンス研修について紹介します。

目次

1.コンプライアンスとは

企業コンプライアンス(regulatory compliance)をウィキペディアで調べると、コーポレートガバナンスの基本原理の一つで、企業が法律や内規などのごく基本的なルールに従って活動することと書かれています。これは、法令遵守と理解することもできますが、似たような言葉にCSR(corporate social responsibility、企業の社会的責任履行)があり、企業倫理(モラル)や企業の社会的責任など、コンプライアンスよりもより広義的に使われることが多いです。

本コンテンツでのコンプライアンスは、コールセンターを運営していく上で、個人情報保護法などの法令違反にならないための活動と認識いただけるとわかりやすいでしょう。

コンプライアンスの研修対象者は、従業員全員です。社長、役員から新入社員まで全てが対象となります。特に、コールセンターでは、パートやアルバイトなど職種に関係なく個人情報を扱う傾向にありますので、コンプライアンス担当の講師は、全員にコンプライアンスを浸透させるよう、工夫する必要があります。

コンプライアンス研修の内容(例)

1.コンプライアンスの説明

2.コンプライアンスの必要性

3.コンプライアンス欠如によるリスク(セキュリティ事故の実例)

4.実際にやるべきこと

5.必要に応じて、ロールプレイングや実習

6.事故発生時の報告先と、エスカレーションルートの確認

7.まとめ

コンプライアンスの研修内容としては上記が一般的ですが、コールセンターでは、例えば以下のように階層によって、研修内容を分けていく必要があります。

1.テレフォンアポインター向け

2.SV、現場のリーダー向け

3.コールセンターの責任者向け

4.経営者向け

なぜなら、階層によって行う業務内容が違うからです。

テレフォンアポインターは、コンプライアンス違反が発生した場合には、責任者へ報告し指示を仰ぎますし、責任者の場合は、火消し作業が必要になり、誰が何を、どのような順番で対応するかを指示したり、場合によってはメディアへの告知なども対応する必要があります。

2.なぜ、コンプライアンス研修を行うのか?

コンプライアンス研修の内容については、上記に記載したとおりですが、重要なのは従業員に必要性を認識してもらうことです。

コールセンターでは、非常に多くの個人情報を扱います。特に、アウトバウンド系のテレアポでは、潜在顧客へ電話をかけていくことが想定されますが、何百人、何千といった顧客の名前、電話番号、住所、購入履歴などの個人情報をデーターベースシステムなど活用して厳重に管理する必要があります。

契約が取れたお客様の情報はもちろん、契約に至らなかったお客様の情報も同様に厳重管理しなければなりません。 この中の1件でも、セキュリティ事故が発生したり、個人情報保護法に触れたりすると、会社全体を巻き込んだ大問題に発展する可能性があります。

3.セキュリティ事故の実例

ここで、実際に発生したセキュリティ事故を紹介します。

お客様の写真をSNSへ投稿して…

(画像はイメージです)

一つめは、大手コンビニエンスストアの例です。30代のアルバイト店員Aさんが、立ち読みをしていたお客様の写真を無断で撮影し、ツイッターへ投稿。その際のツイートにお客様の悪口を入れたり、免許証など個人が特定できる情報も投稿し問題に。ツイートされた投稿はすぐに削除され、店員は辞めていましたが、ツイッター上では大炎上となりました。

冷蔵庫内の写真をSNSへ投稿して…

(画像はイメージです)

二つめは、人気レストランの例です。アルバイト店員が面白半分で、食品用の冷蔵庫に入った写真をツイッターに投稿し、炎上。店側はこの従業員を直ちに解雇し、徹底した店舗洗浄と従業員の再教育を実施し、営業再開を目指しましたが、この状態では顧客の信用回復ができないと判断した経営陣が店舗の退店を決定。この閉店による損害は数千万円にも及び、そこで働いていた従業員も職場を失ってしまいました。

アルバイト従業員からしたら、ちょっとした悪ふざけのつもりかも知れませんが、企業に与える影響は極めて大きく、信用も大きく失墜します。

もし、自分がお客様の立場だったら、このような従業員が働いているコンビニで買い物をしたり、レストランで食事を楽しんだりするでしょうか?少なくとも、好んでいくことはないでしょう。ひょっとしたら、ブランドイメージが落ちて、他のフランチャイズ店舗でも影響が出るかも知れません。

では、コールセンターに置きかえてみましょう。自分がお客様の立場だったら、セキュリティ事故が発生したコールセンターで申込などをしたいと思うでしょうか?個人情報などを進んで教えることはしたくないですし、不安ですよね。

コールセンターの多くは、営業代行などで、他の会社の製品やサービスを取り扱っています。もし、コールセンターの従業員が顧客情報を漏らすようなことがあれば、信用が大きく失墜するのはもちろんですが、取引先からの仕事が途絶えてしまう可能性も考えられます。最悪のケースでは、コールセンターを丸ごと閉鎖しなくてはならなくなるかも知れません。そうなると、そこで働いているアルバイトは、ほぼ全員が解雇となってしまうでしょう。正社員であっても、他に活躍の場がなければ、危険な状況です。

今の時代、一人のアルバイトのちょっとした行動が企業全体に大きなダメージを与える可能性があることも認識しておく必要があります。

4.コンプライアンスの理想と現実

コンプライアンスの重要性は、わかっていただけると思いますが、社内研修を行おうとしても、仕事が忙しいから…、優先順位が高い業務があるから…など理由をつけて、なかなか参加者を集められないことも予想されます。

コンプライアンス研修を行うときには、トップから研修を行うことが大切です。まずは、社長や経営陣にコンプライアンスの必要性と、社内の現状を把握してもらい、早急に対処が必要であることを認識してもらいます。そして、それぞれの部下に対してコンプライアンス研修の参加を義務付けてもらうのです。

従業員も最初は嫌々での参加となるかも知れないので、セキュリティ事故の現状など、インパクトのある現実をわかりやすく伝えて、自分の身の回りでも十分に起きうることや、改善が必要であることを認識してもらいましょう。

そして、コンプライアンス研修は行うだけでは意味がありません。研修内容を実践してこそ意味があるものになりますが、実践こそが一番大変です。コンプライアンスを意識して業務を行うと、従業員によっては面倒と感じることもあり、業務効率が落ちてしまう場合があるためです。そんな時に、上司から業務効率の悪さを指摘されてしまっては、研修前の状態に逆戻りしてしまいかねません。こうならないためにも、コンプライアンス研修はトップから実践していきましょう。

5.コンプライアンス研修はどう行うのが良いのか?

従業員全員が参加することを前提にすると、社内でできるのが望ましいです。可能なら会社の会議室などで、1回の研修は1時間、長くても2時間くらいで終わらせましょう。もし、時間が足りない場合には、回数を分けたり、WEBセミナーやWEBコンテンツを利用したりするなど、工夫しましょう。

また、研修の目的は、コンプライアンスの大切さを認識してもらい、職場に戻って継続的に遵守してもらうことですので、細かい内容をたくさん詰め込むよりも、体験型にするなどして、必要性を感じてもらうよう、心がけましょう。

6.研修後のフォローは、どうするのがいいのか?

コンプライアンス担当者の仕事は、研修を行うことではなく、セキュリティ事故を未然に防ぐことです。コンプライアンスが徹底されているか、定期的に確認できる仕組みを用意しておきましょう。一度研修をしたら、それで終わりではなく、継続してコンプライアンスを意識した業務体系を作っていくことが大切です。

7.コンプライアンス研修を外注化のメリットは?

コンプライアンス研修は、調査、資料作成から始まって、実際の研修、フォローアップまで、やるべきことが多いです。したがって、講師を外注化する場合も増えてきています。外注であれば、講師は色々な企業で教えているため、最新の情報と多くの事例を把握しており、わかりやすい講義が期待できるメリットがあります。

また、社内の人間が講師をするよりも、外部の講師が話をすることにより従業員が真剣に話を聞いてくれる場合も多いです。コンプライアンス研修を外注化する場合には、コンプライアンスとコールセンターの両方に詳しい企業に依頼するのがおすすめです。

8.まとめ

いかがでしたか?コンプライアンスに関しては、優先順位が日々上がっている状況です。大企業なら社内で全てを賄うメリットも大きいですが、中小企業の場合は、外部のリソースを上手に活用して、社内リソースはビジネスの拡大に集中できるようにするのがいいかも知れません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次